木曜生まれは旅に出る。

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ジブリ映画『風立ちぬ』を観たよ。(ネタバレ控えめ)

こんにちは、いつも寝てるのでたまに日曜の午前中に活動するとドキドキするナツキです。

今日は昨日公開されたジブリ映画・『風立ちぬ』を観に行ってきました。

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ジブリ映画『風立ちぬ』は、零式艦上戦闘機などの設計を手がけた航空技術者・堀越二郎の半生と、堀辰雄の小説『風立ちぬ』をミックスしたオリジナルストーリー。

高画質 特報 風立ちぬ - YouTube

泣きました

えっとね、8回くらい泣きました。(主に恋愛パート)
たぶん泣きどころじゃないんだろうなーってシーンでぽろぽろ泣きましたよ。

小説『風立ちぬ』を読めばわかるけど、ヒロイン・奈穂子は結核なのよ。
なんだけど、喪失を予感させるから泣けるのではなくて、二郎が奈穂子を想う、奈穂子が二郎を想う、その真剣さが泣ける。
こういうことで泣けるというのは、もう歳だからですかねえ。

庵野秀明の棒読みやいかに?

試写観た人たちの感想にちらほら目立った庵野秀明の棒読みは、第一声で映画館が失笑の嵐だったものの、途中からまったく気にならなくなった。
宮崎駿がその朴訥さを評価したという声が、二郎の真面目さ、仕事馬鹿で朴念仁な感じ、そこから一転して情熱家だったのね!という意外性などを秀逸に表現できていた。

庵野秀明、恐るべし。

逆に第一声はステキ!と思った本庄=西島秀俊の方が、西島秀俊っぽすぎてちょっと気になるくらい。
しゃべるたびに西島秀俊の顔がちらついてなんだか集中できないw
まあ本庄の造形自体が、西島秀俊がモデルなのか?っていう顔なんだけども。

あと評価したいのはカプローニ=野村萬斎。巧すぎる。
最後まで野村萬斎だって気づかなかった。
いいねえ、野村萬斎

その他、良かったところ。

大正12年 東京」みたいなテロップやナレーションがない。

神の視点が無く、ストーリーだけなところが非常に気に入りました。
歴史詳しくない人だと、なかなか年代や流れが掴みづらいとは思うけど、作中にところどころヒントがあるから、そこから想像すべし。

ちなみに、関東大震災大正12年9月1日。
なので、鯖の骨は大正14年頃ということに。
そして、二郎が最初に設計した七試艦上戦闘機昭和7年頃、九試単座戦闘機昭和10年頃、零戦の初飛行は昭和14年4月、零戦運用開始は昭和15年7月だそうですよ。

夢のシーンがとにかく綺麗

特にカプローニさんが出てくるところ。
草原が綺麗。
空が綺麗。
飛行機が綺麗。
話す言葉のひとつひとつが綺麗。
夢はああいうものであって欲しい。

髪の毛ぶわっ

あと、昔のジブリアニメーションの特長、「テンションが上がると髪の毛ぶわってする」が健在で嬉しかった。
昔の、というのも、実は『もののけ姫』以来、ジブリ映画を観たことがないんです。なぜか。
特に理由もなにも無いんだけど、観る機会が無くてね。
映画館で最後に観た『もののけ姫』が1997年公開なので、実に16年ぶりに観た新作ジブリ
ジブリ、やっぱいいな!
「髪の毛ぶわっ」は伝統芸としてどの作品にも入ってるのかしら。
千と千尋』や『ハウル』もちゃんと観ようと決意。

その他、気になるところ。

零戦の魅力がまったく伝わらない

二郎がひたむきに作り上げた零式艦上戦闘機零戦)がなんだったのか、あの映画観るだけじゃぜんぜんわかんない。
飛行機作りました→失敗しました→飛行機また作りました→失敗しました→またまた作りました→今度は成功しました!っていう単純な話にしか見えない。
あれじゃあ零戦がそれまでに無かった歴史的な戦闘機だってことが、二郎が天才的な航空技術者だってことがぜんぜん伝わらないんだよー!

もちろん、ラストのアレにつながる流れはわかるよ?
二郎と本庄が「日本は貧しい」と言う。その貧しさの中で、莫大な予算がかかる飛行機作り。
二郎は、寝る間も惜しんでます。菜穂子とも一緒に居られない。
そして心血を注いで作った「美しい飛行機」は、戦闘で、特攻で墜落していく。

でもさ、二郎は「美しい飛行機」を作ったんじゃん。
カプローニさんも褒めてたじゃん。

それはそれで、真実だと思うのよ。


断っておきますが、わたしは戦争賛美者ではありません。

戦争で他国を傷つけるのも嫌だし、日本が傷つけられるのも嫌だ。
大切な人も知らない人も、誰も戦争で傷つけられたくない。
どんな飛行機にも負けないで大空を疾走していた零戦は、アメリカ陸海軍に研究され尽くして撃墜して、特攻にまで使われて滅びた。

悲しいよね。

ただ、それでも第二次大戦当時、工夫に工夫を重ねて零戦を作った技術者と、命がけで零戦に乗って戦ったパイロットについて語るとき、「人殺しの道具を作りやがって」「特攻で何人死んだ?」「飛行機乗りなんて人殺しだ」みたいな批判はちょっと違うと思うのよ。

歴史を語るなら時代に即した価値観でお願いしますよ。
戦争末期はいざ知らず、開発当時の零戦は画期的な戦闘機で、堀越二郎だって絶賛されたはず。

その零戦がどう画期的だったか、という、要するに零戦が活躍する絵面が、『風立ちぬ』には出てこない。

なぜか?

宮崎駿反戦主義者だから、だそうです。

宮崎駿は飛行機や戦闘機が大好き。でも戦争は嫌い。矛盾。
だから、零戦が空中戦で大活躍する絵は描きたくないんだろう。

でも、わたしは、そういう背景抜きにして、二郎が作った夢の様な飛行機・零戦が活き活きと飛び回る絵が観たかったよ。

子ども連れ、かわいそうだった。

この映画を子ども(10歳以下)が観ても楽しめないと思います。
絵はとても綺麗なので、飛行機が大好きでおとなしい子だったらなんとかなっても、普通の子ども(特に女の子)だったら、途中で絶対飽きる。
事実わたしが行った映画館でも、子どものぐずる声が聞こえてきたもん。

いやー、これは飽きるよ。
「大正から昭和にかけての航空技術者が仕事して恋する」って映画だよ?
これは、子どもじゃやっぱりストーリー追えないよ。
大人でも、歴史に興味がない人だと、難しいところがあると思う。
カストルプさんのくだりとか。

断言してもいい。これは、子ども向けの映画ではありません。

総括

もう一回観て、また8回泣いてもいいな、と思うレベル。
面白かった!

あと、二郎が作った零戦はどういう飛行機だったのかなと思ったら、
いいタイミングなので、映画『永遠の0』も観に行くといいと思います。

もちろん観てないから映画の出来は担保しないけど、原作本には感動したよ。

風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)

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永遠の0 (講談社文庫)

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スカイ・クロラ (中公文庫)

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